8/29 川之江ロータリークラブの第2999回例会で内村 浩美センター長が卓話を行いました
令和5年8月29日(火)、四国中央商工会議所で川之江ロータリークラブの第2999回例会が開催され、内村 浩美センター長が『医療検査・診断用ペーパーの開発』と題して卓話を行いました。
近年、急速に進むデジタル化(DX)や少子化による人口減少、新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアによるウクライナ侵攻などの社会情勢の変動により、国内の紙の生産量は減少しています。紙産業イノベーションセンターでは、社会の変化に対応するために紙素材や紙の製造装置・技術を活用して他の産業分野へ展開する研究に取り組んでいることを説明し、具体的な事例として、医療検査・診断用ペーパーの開発について紹介しました。
まず、開発の背景について説明しました。現在の日本は高齢化社会であり、予防医療の需要が高まっています。また、新興国や被災地等では衛生的で電力などの動力を必要としない簡易検査キットが求められています。しかしながら、従来のバイオチップでは、基材にガラスやプラスチックを用いているために、検体をキットに流すためのポンプが必要であったり、新型コロナウイルスなどの検査で用いられているイムノクロマト法のキットは、複数のパーツの組み立てやフィルターが必要なために高コストであったりしていました。そこで、紙産業イノベーションセンターでは、安価で大量生産が可能で、使用後は焼却処分ができるなどの利点がある紙製バイオチップの開発に着手したことを説明しました。
次に、紙製バイオチップの開発状況について紹介しました。紙製バイオチップは、紙の持つ吸水特性を活かし、送液のためのポンプなどが不要で、素材に紙を使用することで部品数を減らすことができるなどの特長があります。紙産業イノベーションセンターでは、耐水紙基材に印刷技術を活用してパルプ繊維などの親水性材料を付与し、意図した形状で流路を成形する技術の開発に成功したことを説明しました。更に、流路の空隙構造を調整することで、抗原抗体反応を行うための流速制御やフィルター機能の付与も可能になったことを説明しました。そして、現在、この紙製バイオチップは、新型コロナウイルスやインフルエンザ、血液検査などに活用できる可能性があることから、地元企業の方々と実用化に向けて共同で開発を進めています。
最後に、紙産業イノベーションセンターでは、製紙技術の応用や機能紙の開発を行っており、これからも地域の皆様と連携しながら技術開発や製品開発を進め、紙産業の活性化に貢献したいとの思いをお伝えしました。
卓話の様子