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8月18日、三島高校の学生に課外授業を実施しました!

8月18日に地元の三島高校の3年生16名をお迎えして課外授業を実施しました。今回は、理系進学コースの生徒を対象とし、「理系の大学でどのようなことをしているか?」を体験してもらうことを目的としています。

当センターからは薮谷教授、秀野講師、深堀講師の3名が担当致しました。初めに、当センターの概要や活動について説明した後、3班に分かれて実験を行いました。

 

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・製塩実験(担当:薮谷)

我々の普段口にする「塩」は全て海水から作られています。海水には塩化物イオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、硫酸イオンなどが含まれており、海水を蒸発させると海水中に溶けている物質が溶解度の差によって順番に析出します。最初に溶解度の非常に低い硫酸カルシウムの白色沈殿が生成し、さらにろ液を濃縮すると次第に塩化ナトリウムが析出してきます。これをろ過して乾燥することでいわゆる「食塩」が得られます。得られた「食塩」には塩化ナトリウムだけでなく、塩化カリウムなどが含まれています。

一方、ろ液には、塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなどが溶解しています。この液体のことを「にがり」と呼びます。にがりは、豆腐を作る際に、大豆中のタンパク質を塩析効果で凝固させるために使われています。豆腐に含まれるタンパク質は親水性コロイドで、コロイドの周囲に多量の水分子が取り巻いています(水和)。そのコロイド溶液にマグネシウムイオンや硫酸イオンを多量に添加すると、それらのイオンがタンパク質から水和分子を奪い取り、その結果コロイドが凝集して沈殿やフロック(凝集体浮遊物)を形成します。これを漉して固めたものが豆腐です。

授業では、学生自身で試料調製とそれぞれの実験の操作をしてもらいました。採取した海水を加熱濃縮して、析出した固体の形状について観察しました。続いて、塩化物の定量分析の指示薬として用いられるフルオレセインについての実験を行いました。食塩試料に硝酸銀水溶液を加えていくと、鮮やかな緑色蛍光が最終的に赤く変化する模様を観察し、吸着指示薬の呈色メカニズムについて考察しました。析出した塩を採取した後、残ったにがりを用いて豆腐作りにも挑戦しました。にがりによって豆乳内のタンパク質が凝集することを実際に確認しました。これ以外にも、化学実験の楽しさや大学での生活などについてお話をしました。

授業を通して、学生はこちらからの質問にも積極的に答えてくれ、実験をスムーズに進めることができました。

 

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・セルラーゼと遺伝子(担当:秀野)

「セルラーゼ」という酵素を聞いたことはあるでしょうか?紙の主成分であるセルロースを加水分解する酵素の総称で、衣料用洗剤や繊維加工に用いられています。最近では、木材等の植物からバイオエタノールを生産する際に使われています。

ある生物がどのようなセルラーゼを持っているかは、その生物の遺伝子を解析する事で見えてきます。遺伝子の解析には、DNA断片を増幅するPolymerase Chain Reaction: PCRと呼ばれる反応が利用されています。PCR法が開発されて以来、遺伝子研究は急速に発展しました。セルラーゼに関する研究開発でもPCR法は幅広く用いられています。

授業では、セルラーゼや遺伝子、PCR法の原理等に関して概説した後、実際にセルラーゼによる濾紙分解を体感してもらうと共に、セルラーゼ遺伝子をPCRで増幅し、アガロース電気泳動法によってPCR産物のバンドを確認して貰いました。その他、大学の研究や研究室、研究者について概要をお話しました。

 

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酵素から遺伝子まで、盛りだくさんの内容でしたが、遺伝子やPCR法についても事前に勉強されていたようで、実験にも積極的かつ落ち着いて取り組んでくれました。

今回の授業で、高校の授業でも聞いたことのある物質や方法を、実際に見て使って体験した事で、大学で行っている研究に対して理解と興味を深めるきっかけにして貰えれば幸いです。

 

 

・水中の微量環境汚染物質の除去(担当:深堀)

我々の家庭から出る排水は、下水処理場や浄化槽等で浄化されてから河川や海に放流されています。これらの施設では、物理・化学・生物処理によって環境に有害な物質を取り除き、排水をきれいにしています。ところが、人工的に作りだされた化学物質の中には、従来の排水処理技術では除去できないものもあり、環境に及ぼす影響が心配されています。近年では、私達が使用した抗生物質や消炎鎮痛剤(痛み止め)などの「医薬品」が、家庭排水等を通じて下水処理場に流入しています。医薬品の一部は排水処理で除去されずに流出していることも明らかとなっており、新たな環境汚染物質になるのではと危惧されています。

授業では、身近な水質汚染物質や排水処理の仕組みについて解説した後、通常の排水処理では除去できない化学物質を処理するための「吸着」や、光触媒のような「促進酸化処理」について紹介しました。

 

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実験では、吸着材(活性炭)を用いて染料が溶けた水を処理し、色の変化を観察しました。

 

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次に、「分光光度計」を使用して水中の化学物質の量を測定し、吸着に伴う水中の染料濃度の変化を定量的に評価しました。一見、透明に見える処理水でも、機器分析の結果から染料が残留していることが明らかになり、分析の重要性について学びました。

最後に、当研究室の研究テーマである、吸着材と光触媒との複合材料や、これら機能性材料を配合した「機能紙」について紹介しました。一見、接点のない「水処理」と「紙」の関係から、大学での研究について知ってもらえたと思います。

 

 

いずれの授業に参加された学生さんも、化学や生物をしっかり勉強されており、授業をスムーズに進めることができました。駆け足での授業になりましたが、大学での勉強や研究の一端や、高校と大学のつながりを知ってもらえたと思います。

 

今回、じっくり紹介できなかった部分もまだまだありますので、またのお越しをお待ちしております!

 

 

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