RESEARCH

CNF連続脱水装置の開発

 先述のように、CNFは植物由来のセルロース繊維をナノ化処理した幅数~数十nm程度の極微小繊維で、高機能先端素材です。基本的に、CNFを造るには、水中でナノスケールまで解す必要がある為、98~99%の水が含まれています。大部分が水のCNFは、運搬に多くのコストとエネルギーが必要で、ユーザー側も固形分濃度が低く、使いにくい等の課題がありました。このようにCNF脱水技術が重要であるにも関わらず、効率的なCNF脱水方法に関する情報は少なく、実用例も殆どない状況でした。CNFは非常に微細であるため、単純なろ過や沈殿による脱水は不可能です。また、加熱によって水を蒸発させる脱水方法は、莫大なエネルギーが必要であり、経済的および環境保全的観点から、加熱によらない効率的で消費エネルギーの低いCNF脱水方法の開発が求められていました。
 そこで、我々は、抄紙技術を元にしたCNFの連続的なワイヤー脱水・濃縮法を発案しました。予備検討の結果、CNFの水分散体から脱水し、濃縮できる結果が得られた為、2015年に特許を出願し、2020年に登録されています。
 この基本特許と予備試験の結果を基に、我々は2017~2019年度に実施された環境省の公募事業「CNF製品製造工程の低炭素化対策の立案事業委託業務」に対して「非加熱プロセスによる樹脂混練用CNFの製造-CNF脱水・溶媒置換法の確立-」という課題名で採択されました。本事業は、非加熱且つ連続的なCNF連続脱水システムの構築を目指すものです。本事業中に、CNF連続脱水装置に関して、産官学共同で特許出願し登録に至ると共に、CNF連続脱水装置(図1左)の試作と運転によってCNFスラリーの連続脱水に成功しました。
 本事業終了後も、引き続き四国中央市内に拠点を置く製紙機械メーカーや大手製紙企業と共同研究開発を進め、CNFシートの連続製造装置(図1右)について共同で特許登録に至りました。現在、本装置は全国のCNF取扱い企業から注目を集めており、各社のCNFを用いて実証試験が行われています。中でも、市内の大手製紙企業との共同研究開発では、本装置で連続的に生産されたCNFシート(図2左)が、米国のヒルクライムレースに出場したレーシングカーの車両部材として採用されています(図2右)。

図1 CNF連続脱水濃縮装置(左)およびCNF連続シート化装置(右)
図2 連続製造されたCNFシートの巻取り(左)およびCNFシートを部材として用いたレーシングカー (右)

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