皆さんは、ボールペンで文字を書いている時に、「アッ 間違えた!」という経験をしたことはありませんか?
一般的に、ボールペンで書いた文字は訂正したい時に消しゴムで消すことができません。インキ消しや修正テープ、最近ではボールペン上部のラバーとの摩擦熱によって文字を消せるボールペンもありますが、前者は修正した跡が残ってしまいますし、後者は常時消去できることから「公式文書には使用できない」と明記されています。
そこで、ボールペンで書いた文字(インキ)を消しゴムで消すことができる紙があったらいいなぁ~と思ったことはありませんか?具体的なイメージとしては、図1に示すように、ボールペンで「愛大 太郎」と書いたけれども「太郎」を「次郎」に訂正したい場合、「太郎」という文字を消しゴムで消去して、その上に「次郎」と書くことができる紙であれば利便性が高くなります。しかしながら、ボールペンで書いた文字は本人確認(筆跡確認)の観点から修正できないようにした方が文書としての信頼性を確保できます。そこで、一定時間内であればボールペンで書いた文字(インキ)を消しゴムで消すことができて、しかも、所定の時間が経過すると文字(インキ)を消去できなくなるタイマー機能を付与した機能紙(以下、インキ消去機能紙という)の開発を行いました。
図1のような現象を可能にするために、紙素材であるセルロースナノファイバー(以下、CNFと略す)や高分子材料を用いて、これらを紙表面に塗工して、インキ浸透を制御する紙層構造を作製しました。
図2は、試作したインキ消去機能紙にボールペンで書いた文字を筆記直後に消しゴムで消去している様子を示した写真です。図に示すように新しい機能紙は、筆記直後はボールペンで書いた文字(インキ)を消しゴムで消去できることが分かります。
次に、ボールペンで書いた文字(インキ)を消去できなくなるタイマー機能を確認するために、ボールペンで筆記後、一定時間経過してから消去試験装置を用いて試験を行い、その効果を確認しました。その結果を図3に示します。上段が消去前、下段は消去後の様子です。筆記直後の場合はインキを消去することできました。そして、3時間経過後は少しインキが残っており、24時間経過するとインキが残存していることで分かりました。つまり、24時間以降ではインキを消去できない機能紙を開発することができました。なお、現在では6時間でインキ消去できないようにコントロールする技術もできており、タイマー機能についても自由に設計・制御できることを確認しました。
我々が開発したインキ消去機能紙は、愛媛大学独自の技術として特許出願しました。そして、地元企業に本技術を提供しながら実製造に向けた共同研究を進めています。このような新しい技術や製品を愛媛から全国に、そして、世界に発信することによって、皆さんの生活を便利にできる技術や製品を提供していきたいと考えています。