GREETINGS

センター長挨拶

 

センター長 内村 浩美 

地域産業特化型研究センターの
これまでの歩みと
多機能化を目指して

愛媛大学 紙産業イノベーションセンター
センター長 内村 浩美

 

 愛媛大学紙産業イノベーションセンターが開設されて10年、これまで我々が四国中央キャンパスで研究活動、教育活動、社会貢献活動を行うことができましたのは、地域の紙産業界の皆様や自治体の皆様、そして、四国中央市をはじめとする地元の皆様など、多くの方々からのご支援とご協力をいただいた賜物でございます。改めて、心から感謝申し上げます。
 紙産業イノベーションセンターは、2014年全国の大学で初めて誕生した紙産業に特化した研究拠点です。地域密着型の研究センターとして、日本一の「紙のまち」である四国中央市で開設しました。本センター設立のきっかけになったのは、2010年に発足した大学院農学研究科「紙産業特別コース(現、バイオマス資源学コース)」でした。当時、電子媒体の急速な普及やグローバル化などにより、今後ますます国際的な競争が激化することは必至であり、地域の紙産業界では、①現場の様々な問題を解決できる人材、②将来は幹部となって産業界をリードする人材の育成が求められていました。
 このような状況の中で、2010年に着任後まず着手したことは、四国中央市で愛媛大学としての教育・研究・社会貢献活動を推進していくために、「大学が地域産業発展のために何ができるのか?」「紙産業界の方々が大学に期待することは何か?」について分析を行い、具体的な活動方針ビジョンを策定することでした。そこで、大学の役割を一般的に活用されている「人・物・金・情報」の基軸で分類し、独自の活動方針ビジョンを立案しました。その概要は以下のとおりです。

「人」:紙の技術や経営を学び、かつ人間カ・社会人力のある学生を育てる。そして、その学生の希望を諄重しながら紙産業界に供給する。
(人材育成と人材供給(就職活動)機能)

「物」:(「物」を「技術」に置き換えて)紙に関する新たな技術や製品開発技術を提供、あるいは、実験装置や実験設備、実用化に向けたノウハウを提供する。
(研究開発機能)

「金」:外部資金を産官学連携で獲得し、連携する共同研究者と一緒に研究活動に活用する。
(産官学連携機能)

「情報」:講演会やセミナー等を開催して、新たな技術・新しい情報を発信する。
(情報発倍機能)

 この活動方針ビジョンに基づいて、紙産業特別コースの教育活動に関しては、「将来の紙産業界の幹部候補生となる人材の育成」を目標に、①製紙技術の専門教育とともに、②現場密着型の実践教育を行うこと、③課題を発見でき、解決できる能力を養う教育(課題解決型実習プログラム)を行うことに重点を置いて指導を行いました。また、研究活動に関しては、2年間かけてプロジェクト研究に取り組み、課題解決手法や研究実施計画等に関するノウハウを実践的に修得することとし、学部卒業生のみならず、地元の紙産業に関わる社会人を積極的に受け入れて、研究開発を行いました。その結果、社会人学生が会社で直面している課題を研究テーマとして取り組んだところ、課題を解決するとともに、複数の特許を地元企業と共同出願することができました。なお、研究活動を推進するための実験設備の一部は、愛媛県のご厚意により当センターに隣接する愛媛県産業技術研究所紙産業技術センターの装置を無償で借用しています。

 他方、社会貢献活動にー関しては、新たな技術の情報発侶を行うことを日的に、「紙産業イノベーションセンターシンポジウム」を四国中央市で毎年開催(2020年、2021年は新型コロナウィルス感染防止対策のため中止)するとともに、紙の魅力を伝えるための講演活動を行っています。また、地元の中学生や高校生に身近な紙製品の特徴や紙の機能について知ってもらうための出前講義を年間10数回実施しており、生徒さん達に紙に興味を持ってもらい、地元の紙産業界への就職活動につながるような働きかけについても努めているところです。更に、四国地域の紙産業界の活性化に向けたビジネスマッチングサイト「四国は紙國」の設立や、セルロースナノファイバー(CNF)の事業化を推進するための「四国CNFプラットフォーム」を立ち上げて、新たな技術や製品開発についてオープンイノベーションとクローズドイノベーションを使い分けながら、企業の方々への技術支援も行なっています。
 このような取り組みを行う中で、紙産業イノベーションセンターにおいては、①前述の大学院農学研究科や社会共創学部で実施している「教育活動」によって、紙の知識を有する専門家の育成を行うとともに、コミュニケーション能力などの社会人力を身に付けた人材を地域産業界に供給すること、また、②当センターの「研究活動」によって、新規な技術・製品を創出し、地元産業界にその情報を広く発信するとともに、その技術を企業に提供することにより、新しい製品開発や技術開発を行う企業の取り組みを支援することが重要であると考えています。そして、このような活動は、紙産業界の振興と地域の活性化を導く「社会貢献活動」につながると考えています。
 紙産業イノベーションセンターでは「教育活動」「研究活動」「社会貢献活動」を有機的に連動させることにより、紙の知識を有する人材の育成や新技術の開発を促進するとともに、産官学連携によるスパイラルアップを行い、地域に立脚した紙産業の連携拠点としての活動を拡充していきたいと考えております。引き続きご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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